回転する手品師

意味はない

雌鳥

アイトラッキングによる手品理論の検証について真面目に考えようとした結果真面目に考える価値すらない結論に至ったというオチ。今だとVR技術関連で視線誘導とかの研究が比較的身近にあって、まあ仮想空間だと色々任意にオブジェクト配置できるから現実世界とは違う部分も多いんだけど、手品理論に近い感じの議論も多少はあるんじゃないのかなと思うので、そっちを掘る方が建設的だと思います。手品としての文脈、領域での研究は無謀かなと。私はVR関連は興味の範囲外なので今のところ触れる気はありません。

 

アイトラッキング。なんか手品理論を検証した研究があるらしいですね。予め言っておくと、アレわりと限界点だと思います。我々はこの先まだまだ経験則に頼らねばなりません。現実的な検証手段が出てくる事を願うばかりです。

 

具体的なお話。

アイトラッキングで手品研究をするなら、なによりもデータの量が必要です。可能な限り通常のパフォーマンス下で、無作為な観客が望ましいでしょう。装置をセッティングする必要がありますから場所を頻繁に変えるわけにはいきません。となると、現実的なのはマジックバーくらいでしょうか。バーのカウンターのどこかに装置を設置しておいて、ひたすらデータを集めまくる。しかしこれが全く現実的ではない。なぜか。

まずマジックバーは暗い。そもそもアイトラッキングできるのか。

次にどこに装置をセットするのか。観客の目線を追えるような位置にレンズが覗いていたとして、そこで得られたデータは信頼できるものなのか。

そして観客の目線を追える位置を遮らずに演技する事は可能なのか。

これに加えて、私の調べた範囲では、アイトラッキング装置はパフォーマンス等への利用を想定されて販売されてはいないようです。パフォーマンスの解析に利用する場合、アイトラッキング装置自体に加え、パフォーマンスそのものを撮影した観客目線のカメラも必要になります。この部分に関して技術的に不可能ということは無いと思いますが、その方向に展開されてない以上、根本的に研究開発費が必要です。とても無視できる額では済まないでしょう。

最後に、これがあまりにもどうしようもない事なのですが、集めたデータを分析する手段がありません。人の手であれこれするには限度があるのである程度は機械的に処理される必要がありますが、現実的に何を基準にどう分析していけばいいのか見当もつきません。なにせ演者の動きは一定でないし、観客の目線も一定ではないでしょう。セリフも毎回微妙に変わるはずですし、前後の演目の影響だって無視できません。バーなので観客のアルコールの程度も考慮しなければいけません。そもそも、私たち手品関係者ですらそういった様々な事項を整理しきれていない現状があるのです。それをどうやって機械的処理に落とし込めと言うのか。では機械的処理を諦めたとして、それでも数百程度のサンプルであれば手作業でやれなくもないでしょうが、仮に手作業でやるとしたときに出てくる問題は、それを誰がやるのかという点です。まさか手品関係者にやらせるわけにはいきませんから、誰かふさわしい人なり組織なりに委託する必要があります。相当の額が必要になることでしょう。

では仮にこれら全てをマネーパワーで押し通したとして、それに見合った結果は得られるでしょうか。無理でしょうね。