回転する手品師

意味はない

例えばですよ、私がPC使って何か作るとして、必ず何かしらのファイルを作ることになるわけじゃないですか。それでもって、そいつをどこかしらのフォルダに入れるわけです。フォルダには「習作」とか「5」とか「急ぎ」とか「作業中」とか名前がついていて、デスクトップに散乱しております。基本的に自分が分かれば良いものなので、名前には記号的な意味しか求めません。ですから、フォルダ内のファイル名ともなるとなおさら適当で、「aaa」とか「あ」とか「cgiglfkfyuc」とかになっていて、各々のファイルは拡張子で判断するわけです。複数の同じ拡張子のファイルを同じ階層に置かないといけない時でも、せいぜい「1」とか「2」とか、あるいは「a」からの「aa」みたいな感じになります。

しかし、そんな中から時折世に出さなければならないものが出てきます。それが作品として発表されるのか、それとも友人の手に渡るのか、目的はさておき、私の手を離れる場面に至って、さすがにこのファイル名ではまずかろうと思い変更することになります。そこで何かすぐに命名できるなら良いのですが、何も思いつかない事もままあって、じゃあどうするかって言うと、事前に付いていた適当なファイル名、例えば「aaa」から「あ」と「3文字」という遺伝子を引き継いで、「木通」などと名付けるのですね。

木通は国内の山野に生息する植物で、果肉は可食で甘く、また秋の季語でもあります。このことから、例えばファイルの内容が秋の何か暗示しているのではないかとか、木通の果実の厚い皮から連想して内容はオブラートに包んだ表現なのかもしれないと推察したり、古くは日本各地で見られたのに都市開発でいつしか遠い存在になってしまった事と関連付けたり、読み手がファイル名に何かしら意味を見出すかもしれません。それを発信した側がどうこうすることはできないので、肥大化する解釈はボーッと眺めるだけです。木通というファイル名に何を感じ取るかは受け手次第で、どう膨らんでいくかも含めて「それ」であると作り手は思っていた方が良いのかもしれませんが、それはそれとして「木通」は「aaa」以上の意味はなく、もしこれが「aaaaa」だったのなら例えば「アメジスト」だったかもしれないのです。例えばですけど。