回転する手品師

意味はない

ポプラの木

フィンガーパームってなんなんだ。みたいな事を考えてちょっと整理した。途上。

 

まず大前提として、この基礎(どうやら基礎らしいよ?)技法はコインの大きさ、手の大きさ、指の太さ、肌質などの条件によって様々に変化する。そのため、技法を記述する時に具体的な手の形やコインの位置などを示したとしてもあまり意味のない場合がある。実際にパーム技法はそれらの影響が大きいものだ。そこで、技法の目的とそれを達成するための個別の理屈を、つまりチューニングの仕方を示すのもまた一つの正義なのではないかと思う。だからここでは具体的な正解は示さない。そんなものはないのだから。各々でチューンしてほしい。そしてチューンするときは横に助言してくれる友人を用意しておいた方が良いだろう。

 

フィンガーパームはそれ単体では成立しない技法だ。この技法には後述する2つの互換ポジション(計3ポジション)が存在し、状況に応じて使い分ける必要がある。実際のところこれを無自覚にやっている人も多い(その辺を全部ひっくるめてフィンガーパームって言ってるの良くないと思うよ)。順に説明する。

 

1つ目はフィンガーパーム。教科書的には薬指の第一関節と第三関節とで持つ。実際には関節であるとは限らない。普通に関節の中間で保持することもある。できるんだからしょうがない。この保持の特徴を挙げると

・薬指の形がある程度固定される。第三関節は自由に動かせるがそれ以外の関節は固定される。

・他の指は自由。ただし指の間を空けるのは厳しめ。薬指にある程度合わせてやる必要がある。

・とりわけ人差し指が自由で、指先で何かを扱いたい場面で不自由がない。

・手の角度、重力の影響を受けない。あらゆる場面で安定する。

という感じだ。

とにかく安定感が高く難易度もさほど高くないのが魅力だ。欠点として、指をある程度以上曲げなければならず、フィンガーパームに入れるという操作はどうしても握りこむ動きを必要とする点が挙げられるだろう。もちろん、保持からリリースする際も同様だ。パーム中だと薬指の形が固定されるのも拍車をかける。

 

2つめは、名前が付いているのか分からないのだが、小指に乗せ他の指に立てかける保持だ。天海ドロップした時になる位置だと言えばなんとなく通じるだろうか。まあそれとも少し違うのだが。

天海ドロップをした際のポジションでは指が伸びている事が多いと思うが、そこから少し指を曲げた形、特に支える小指は第二関節で45度近く曲がっていても良い。特徴はおおよそ以下のような感じだ。

・指をある程度伸ばせる。

・全ての指が一定範囲動かせる。

・コインが固定されているわけではないので手の角度が制限される。手を大きく動かすこともできない。

手の形単体で評価するならフィンガーパームに勝るとも劣らない優れたポジションである。ただし可動範囲は狭く安定しているとは言い難く、また手の形を経時的に変化させるのも苦手だ。フィンガーチップレストポジションの手を立てたとき用みたいな使い勝手だと考えると、逆に伝わらないかもしれない…。基本的に何か技法をを行なった後の静止状態や脱力状態で使うこととなる。

 

3つめはフロントパーム。フロントパームは指を伸ばして行うと思われがちだが、これもまた全ての指を少し曲げて行うべき技法だ。位置としては、2つめのポジションにあるコインのエッジを人差し指で押さえる感じだ。人差し指全体を深く沈めるのではなく、人差し指全体は軽く沈めるに留めて第二関節を少し曲げる事で対応する。特徴は以下。

・指をある程度伸ばせる。

・コインが固定されるため手の角度の制限が緩い。

・指の可動範囲が小さい。

・指の形が静止状態では多少不自然になる。

指を伸ばしながらも手の角度を変えられるのが大きな特徴だ。ただしそのために支払う代償も大きい。

 

ここで一番大事なのは、この3つのポジションは全て互換ポジションであり、全てのポジションはシームレスに自由に行き来できる、という点にある。

3つのポジションの特徴を見れば、明らかにフィンガーパームが頭一つ抜けて優れており、他のポジションは欠陥であるようにも見えるだろう。それは確たる事実であり、実際に運用する上でもフィンガーパームを基準と扱うことになる。けれど、他のポジションにもそれぞれ代え難い強みがあり、それらをみすみす捨て去るのはあまりにももったいない。

つまり、ここで挙げた3つのポジションの位置は、コインが「薬指一本で保持され」「小指に乗り」「軽く沈めた人差し指がエッジが触れる」ようにチューンされるのが理想である。そのために例えばコインを変えてみたり、コインの位置をずらしたり、あるいは指の筋肉を鍛えたりする必要があるわけだ。

フィンガーパームを緩めれば小指に乗ったポジションになり、その逆もまた然り。小指に乗った状態から人差し指を少しずらすだけでフロントパームになり、その逆も。人差し指の動きと他の指の動きを同時に行えばフィンガーパームとフロントパームも一手で移行できる。しかも極小の動作でだ。

シームレスに移行しあえることがどのようなメリットをもたらすか。これにはフィンガーパームの抱えるデメリットが関係してくる。フィンガーパームのデメリットとして手を握りこむ動きが挙げられ、フィンガーパームを用いる技法(特に技法中にフィンガーパームに入れる動作が入るもの)において、この握り込む動きが悪目立ちする場面がある。パームする手は多くの場面において相手の注目下にないことを想定されており、ミスディレクションの基礎理論に基づいて考えると、パームする手に必要以上の動きがあることは望ましくない。これをフィンガーパーム単体で解決を図ったとしても、握り込む動きは構造上どうしようもない。そこで互換ポジションを利用して握り込むタイミングを遅らせたり、あるいは握り込む動作自体を排除することができる。

またフィンガーパームのデメリットとして指の形の制限も挙げられ、指の形の制限は他のポジションも抱える問題ではあるが、3つのポジションがシームレスに移行しあえることを考えればその問題が容易に解決されることについては説明するまでもないだろう。

 

具体的な話を少しすると、スタンディングの場合、指の背が観客を向いていて手を前に出しているときは小指に乗せるポジション、手を下げるときはフロントパーム、下げ切って観客の意識を切ったらフィンガーパーム、手を戻すときはフィンガーパームかフロントパーム、指先でコインを持ちたいときはフィンガーパーム、まあ、分かるでしょ?だいたい。

 

大切なのは、フィンガーパームは固定されたポジションではないということ。状況に応じて互換ポジションを使い分ける必要があるということだ。それから、ある程度コインやっている人は、具体的なハンドリングはともかくとして、近い事をだいたい皆できているはずので、身近な人を参考にするのも良いだろう。奴らは語らないので盗むと良い。